「宇宙めだか」見に行こう
〜DNAに先祖の記憶?〜

2004/01/24


 

 みなさんは「宇宙めだか」を知っていますか?

 これは、1994年、宇宙飛行士の向井千秋さんと宇宙へ行った4匹のメダカのことですが、その子孫が科学館で飼育されています。子孫といっても、子どものそのまた子ども・・・といった約9世代目の子どもになります。

 


「宇宙めだか」の実験を説明した井尻さん

 メダカを宇宙へ送り込んだのは、宇宙での魚の養殖が大きな目的で、小さい水槽で飼育できることや遺伝学的研究がしやすいなどの利点があるからです。

 メダカを使って基礎的な宇宙実験を行い、食用魚と呼ばれるタイやカレイなど大きな魚の飼育を計画していく予定です。将来宇宙から魚が輸入される時が来るのかもしれませんね。宇宙から来た魚の味はおいしいのでしょうか。

 メダカは、卵から産卵できる成魚になるまで3ヶ月くらいで成長します。3ヶ月で成魚になるということは、人間が20歳で成人だとすると80倍の速さで世代交代をします。

 宇宙空間では、生物に有害な放射線や宇宙線などがたくさんあります。このような空間で何世代も影響なく生き続けることができるなら、人間も宇宙空間で生活できるのではないかという期待を持つことができます。

 世代交代を繰り返す実験は、将来国際宇宙ステーションで実施する予定です。宇宙へ行くことができたメダカは、目の良いメダカが選ばれました。地上では、眼や耳石(じせき)といった器官で平衡を保っているのですが、無重力では重力を感じる耳石は役に立ちません。そこで目で自分の位置を認識でき、無重力での宇宙酔いに適応できるメダカが選ばれました。


科学館で飼育されている「宇宙めだか」の子孫

 

 この話を聞くと視力の悪い人は宇宙飛行士になれないと思ってしまいますが、ご安心を。メガネなどである程度視力があれば良いようです。希望を持って宇宙飛行士を目指しましょう。

 これらの内容は、昨年12月に開催した県内の教員向けのセミナーでのお話です。この実験の考案者である東京大学アイソトープ総合センターの井尻憲一先生が当時の実験について、ビデオなどを使い話しました。

 メダカは絶滅の危機にひんしており自然界でも見る機会が少なくなっています。21階展示ゾーンにいる「宇宙めだか」の子孫を見て自然に対する思いと宇宙へのロマンを感じとってみませんか? この子どもたちのDNAには、先祖が体験した宇宙の記憶が刻まれているのかも知れません。

 
 

(事業課展示情報係 鈴木 典秋)

 

2004年1月22日 福島民報新聞 情報ナビ タイム「スペースパーク便り」より