科学の広場

生まれ変わる紙

 皆さん、今、自分がいる辺りを見回してみてください。幾つの紙製品が目に映りますか? 新聞紙、本、ティッシュペーパーなど、私たちは実に多くの紙に囲まれており、紙は生活する上で欠かせないものになっています。今回は、この便利な紙についてお話しします。

 紙が発明される以前から、世界各地では、文字などを書くために岩や石、獣骨、皮、木、布などを利用していました。紀元前2500年ころの古代エジプトでは、植物の幹を薄くそぎ、押したたいて接着した「パピルス」が使われていました。これが紙の起源と言われていますが、現在の紙とは随分違うものでした。現在の紙のように植物の繊維(パルプ)を使う製法は、紀元前2世紀ころの中国で確立され、日本へは5世紀ころに伝来しました。当時、日本の紙の原料は主に植物が使われ、これが後に日本独自の「和紙」として発達していきました。


紙の材料として完成した紙

 現在、紙の原料の多くは、環境に配慮し、一度使って不要になった紙(古紙)と、木材から抽出したパルプで賄われています。使用される木材は主に、アカマツなどの針葉樹、ブナなどの広葉樹があり、それぞれのパルプの特性を生かして、多様な紙が作られています。その木材も、森林の成長促進のため間引かれる間伐材などを使う工夫がなされていますが、木の成長には時間を要するため、貴重な森林資源の利用は、最低限に抑える必要があります。そのため、紙のリサイクルが重要になっています。

 新聞紙や牛乳パックなど集められた古紙は、ゴミを取り除いたり、インクを抜いたりするなどの工程を経て、主に紙製品に再生されます。例えば、牛乳などが入っている1リットルの紙パックが6枚あれば、トイレットペーパー1個に再生できるのです。貴重な資源を無駄にしないためにも、積極的にリサイクルを行いたいものです。

 そこで今回は、ご家庭で楽しみながら、牛乳パックをリサイクルして紙を作ってみましょう。



乾燥パルプ(左)と水に入れたパルプ(右)

 まずミキサーを使って紙の原料であるパルプを作ります。飲み終えた牛乳パックを切り開いてよく水洗いし、重りを載せて3日ほど水につけておきます。その後、表と裏のフィルムをはがし、それを手で小さくちぎります。1リットルの牛乳パック1枚につき、1リットルの水を用意し、ちぎった牛乳パックをミキサーにかけます。紙の形がなくなり、半透明な繊維質の状態になったら、パルプ液の完成です。次に、パルプをすくって紙を作ります。大きめの容器にパルプ液を移し、パルプ同士がより結び付きやすくなるように、洗濯のりを約30ミリリットル加え、よく混ぜます。ふるいやざるなどの目の細かい網でパルプをすくい、厚さが均一になるように整えます。均一になったらそこから取り出し、水分をよく取ります。しっかり乾燥させたら、手作り紙の出来上がりです。牛乳パック1枚で、約2〜3枚の紙を作ることができます。

 パルプは、水に入っている時はバラバラになっていますが、水が少なくなるにつれ、パルプ同士が結び付き、乾燥させるとさらに強く結び付く性質があります。この性質があるおかげで、新聞紙や雑誌、段ボール、紙パックなどは再生紙として生まれ変われるのです。


 
 6月5日は「環境の日」。そして6月の1カ月間を「環境月間」として、全国でさまざまな行事が行われます。この機会に、私たちが直面している環境問題をもう一度見詰め直してみてください。

 
(郡山市ふれあい科学館 事業課 梅津 朋子)

2010年6月3日 福島民報新聞 情報ナビ[たいむ] 「スペースパーク便り」より