科学の広場

コマのお話

 今回は正月の伝統的遊びの定番となっているコマについてお話します。「もういくつ寝ると〜」で始まる唱歌「お正月」の歌詞に登場し、正月の遊びという印象のあるコマですが、実際は季節に関係なく、全国的に年中親しまれている一品なのです。

 では、コマとは何か?

 広辞苑(こうじえん)を引くと、(1)子供の玩具。円い木製の胴に心棒(軸)を貫き、これを中心として回転させるもの。種類が多い (2)一点が固定され、この点すなわち支点の周りに自由に回転する剛体。などと記されています。大半の人が思い浮かべるイメージとしては(1)でしょう。

 さて、コマはいつからあったのでしょう?

 諸説ありますが、世界的にみると、現在確認されているものでは、エジプトで見つかったコマが紀元前2000年ごろから紀元前1400年ごろのものといわれ、逆円すい形をしています。日本では、7世紀の藤原京跡から出土したものがあり、逆円すいの先端がさらに突出した形をしています。これらのコマは形から、側面をたたいて回転させた「たたきゴマ」と呼ばれるものと考えられています。このように大変古くからコマは存在したのです。


逆立ちゴマ

 起源は違えど、その後、コマは世界各地で作られ、それぞれ独自に発展していき、時代や国・地域によってさまざまな形が生み出され続けました。そして現在でもさまざまな工夫によって、新たなコマが作られ続けています。これら多種多様のコマの中から、いくつかおもしろいものをご紹介しましょう。 

【鳴りゴマ】

 回すと音が鳴るコマ。中が空洞になっていて、回した際に横に開けた穴より入った空気の流れによって音が鳴ります。古くは文献に「唐独楽(とうごま)」として書かれ、後に「ゴンゴン独楽」と呼ばれていました。

【逆立ちゴマ】

 初めは、普通に回転していますが、途中でひっくり返って、上下逆の逆立ち状態で回転するコマ。胴の下が球面になっていて、速く回転すると低く据えられた重心が上に移動し、高い位置で安定して回転します。



ジャイロゴマ

 
【ジャイロゴマ】

 1921年に誕生した比較的新しい部類に入るコマ。回転部分と軸が分かれているため、コマが回転中でも触ることができる画期的構造を持っていて、いろいろな回し方ができます。一時は大変な人気を博し、一大ブームを巻き起こしました。ジャイロ効果といわれる、物体が回転した際、回転軸の向きを一定に保ち、姿勢を乱されにくくする性質などが、わかりやすく体験できます。

 このように不思議な魅力があるコマについて、科学館では1月のサイエンススタジオで「なぜ回る?コマのひみつ」として取り上げています。ぜひ、この機会に科学館に訪れて、いろいろなコマを回して、コマ博士を目指してください。

 
(郡山市ふれあい科学館 事業課 井 剛)

2011年1月20日 福島民報新聞 情報ナビ[たいむ] 「スペースパーク便り」より