七夕の観察、旧暦のころに

2002/07/05


 七月七日は年に一度の星祭、七夕の日です。七夕伝説は天の川の両岸に住む働き者の織女と牽牛(けんぎゅう)にまつわる話で、年に一度、七月七日の晩に晴れると二人が会えるという恋物語です。

 日本の七夕祭りは、起源の異なる二つの祭りが合体したものです。一つは、針などを祭壇にささげて工芸の上達を願い、星を眺めるという、中国の宮廷より伝えられた乞巧奠(きっこうでん)という祭りです。もう一つは、それ以前からあった棚機女(たなばたつめ)という 巫女が、水辺で神を迎えるという「禊ぎ(みそぎ)」の行事です。一般庶民には江戸時代に広まり、笹飾りも行われるようになりました。

 七月七日は梅雨の季節で、星が良く見える時期ではありません。なぜこの時期に星祭なのでしょう。本来の七夕は旧暦七月七日に行う年中行事で、現在の暦では約1ヶ月遅れで、今年の場合は8月15日がその日にあたります。仙台などのように毎年一ヶ月遅れで七夕を行うところも少なくなく、その頃なら天候も安定しており、星もよく見えます。

 

 織女の星は、おりひめ星と呼ばれ、こと座の一等星ベガです。牽牛の星はひこ星で、わし座の一等星アルタイルです。これらの星は午後八時ころ、東の空を見上げて一番明るく輝いているのがベガで、斜め右下に次いで明るく見えるのがアルタイルです。二つの星の間には織女が渡るという天の川が南へ流れているのですが、近年の街の星空では想像するしかありません。

 また、ベガの左下、天の川の中には、はくちょう座の一等星デネブが輝いています。アルタイルと合わせて夏の大三角形と呼ばれ、いずれも一等星となっていますので、街の中でもよく見えています。


7月7日午後8時ごろの東の星空

 


二重星アルビレオ(写真提供:北原天文台)

 

 はくちょう座は主に二〜三等星からなっており、十字形に結べるので、見つけやすい星座です。 その中の三等星アルビレオは肉眼では一つにしか見えませんが、小型の望遠鏡でも二つに分かれて見える二重星(にじゅうせい)です。 一つはルビーのように赤く、一つはサファイアのように青く輝き、夜空にあるたくさんの二重星の中で最も美しいといわれています。 一度ご覧になれば、たちまち星のとりこになってしまうのではないでしょうか。

 

(天文係 木村 直人)

2002年7月2日読売新聞福島版の「星のある風景」より