新年は「おひつじ座」眺めて

2003/01/26


 

 みなさん、明けましておめでとうございます。 さて、今年は十二支では未(ひつじ)年になります。今年の年賀状にはかわいらしい羊を描かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。


宇宙劇場で見たおひつじ座
(夜8時ごろ、南の空60−70度の高さ)

 ところで、この羊は星空でも見つけることができます。それが「おひつじ座」です。 秋の星座として紹介されますが、この頃でも、夜8時ごろに南の空を見上げると、およそ60〜70度くらいの高さに「へ」の字を裏返しにしたような、こじんまりとした姿を見つけることができます。

 神話では、この羊は金の毛を持っており、空を飛ぶことや人間の言葉を話すことができたと言われています。 テッサリアという国の王子プリクソスと王女ヘレがいけにえにされるのを見かね、天の大神ゼウスが2人を助けるために遣わせたひつじです。

 この小さな「おひつじ座」ですが、星占いの第1番目の星座として知られ、星座の誕生とともにその歴史が伝えられています。なぜこの小さな星座が星占いでは必ず1番目に紹介されているのでしょう?これはおよそ3000年前のギリシャ時代にまでさかのぼります。 当時は春分点が「おひつじ座」の中にありました。春分点とは、簡単には春分の日に太陽が輝いている位置を指しますが、天文学的には、太陽の通り道である黄道と天の赤道が交わる点です。いわば天文学上での1年の始まりと言える位置です。

 現在の春分点は、地球の自転軸がコマのように首を振る歳差(さいさ)運動のために、「うお座」へ移動してしまいましたが、星占いの世界ではギリシャ時代のまま、「おひつじ座」を出発点としています。もちろん、中国で生まれた十二支での未(ひつじ)と、西洋で生まれた「おひつじ座」には関係はありませんが、新しい年の始まりに「おひつじ座」を眺めてみるのはいかがでしょうか。


3000年前の春分点

 

(天文担当 安藤 享平)

2003年1月21日 読売新聞福島版 「星のある風景」より