太陽系の”親分” 木星が見ごろ

2003/02/19


 

 「すいきんちかもくどってんかいめい」幼いころ呪文(じゅもん)のように繰り返して覚えたこの言葉は、太陽から近い順番の惑星の名前です。

 昨年の春には、夕方の空に水星・金星・火星・木星・土星が並び、惑星の井戸端会議をみることができたわけですが、今年の冬は、夕方の空に土星と木星、明け方の空に金星(明けの明星)と火星を見ることができます。惑星は、毎年同じ季節になると同じ場所に惑星が見える、というわけではありません。なぜなら、惑星は地球と同じように太陽の周りを回っているために、地球上から見ていると星空の中を少しずつ移動します。

 夜空に見える星座は季節ごとに変わり、毎年同じ季節になると同じ星座を見ることができるのに対し、惑星は見える位置が変わります。まるで星空の中を迷うかのように不思議な動きをすることから、惑(まど)う星という意味で、惑星という名前が使われています。


望遠鏡で撮影した木星とガリレオ衛星(写真提供:チロ天文台)

 夜の8時頃、東の空に一番明るい星があれば、それは間違いなく木星です。惑星は他の星たちのように大きく瞬(またた)いたりしないのが、見え方の特徴です。木星は小さな口径の望遠鏡を利用しても、縞(しま)模様をよく見ることができます。私が初めて木星を望遠鏡で見たのは高校生の頃で、宇宙の闇にぽっかりと浮かぶように見えたその姿に興奮し、家に帰ってもまぶたの裏に焼きついて、なかなか眠れなかったことを思い出します。

 水素などのガスでできており、約10時間という非常に短い時間で自転しているため、上下にややつぶれた形をしています。また、木星の周りには、ガリレオ衛星と呼ばれる明るい4つの衛星も見ることができます。月が地球の周りを回るように、ガリレオ衛星も木星の周りをまわっているため、定期的に観察すると4つの衛星の見え方が変わり、宇宙の法則を感じるように思えます。


木星の直径と質量

 

 科学館のあるビッグアイの上部球体(直径26メートル)を太陽に見立てると、木星の直径は2メートル67センチのサイズになります(地球の直径は24センチ)。太陽に比べると小さいと思うかもしれませんが、太陽になり損ねた星といわれ、太陽系の中では一番大きな惑星です。もっと質量が大きく生まれていれば、木星は太陽のように自ら光を出し、太陽と双子の星になっていたのかもしれませんね。縞模様の洋服を身につけた、太陽系の惑星の親分を帰り道にぜひ見上げてみましょう。

 

(天文担当 田辺 玲奈)

2003年2月18日 読売新聞福島版 「星のある風景」より