雨の七夕
〜観測には時期が良くない〜

2003/06/27


 

 2週間後の7月7日は「七夕」です。1年に1度、7月7日の夜に織女(しょくじょ=織り姫星)と牽牛(けんぎゅう=ひこ星)が会うことができるという、ロマンチックな伝説は、多くの方がいつかどこかで聞きご存知ではないかと思います。

 しかし、実際に七夕の星を見ようとすると、大変都合の悪い時期です。まず、7月7日は梅雨のさなかで、「七夕豪雨」という言葉もあるほどです。さらに、宵空に七夕の星を見ようとすると、まだ東の空低い場所にあり、見やすいとは言えません。なぜ、このような条件の悪いときに、星まつりを行うのでしょう。

 


プラネタリウムで見た七夕の星。 このころは、織り姫がひこ星に比べると高く空に昇っています。見方によっては織り姫が積極的なようですが・・・?

 その理由は、私たちの使っているカレンダーにあります。現在のカレンダーと、日本で明治4年まで使用していた、いわゆる「旧暦」では1ヶ月前後のずれがあります。本来、旧暦の7月7日を七夕としていたものを、今のカレンダーに合わせて行うことに無理があるのです。ちなみに、今年は8月4日が旧暦での七夕にあたります。この時期であれば梅雨も明け、七夕の星たちも空高くに見えています。

 また旧暦7月7日では、上弦の月が天の川付近に輝いています。まるで2人を月の船が会わせてくれるようにも見えます。

 七夕の由来は非常に古く、紀元前の中国の乞巧奠(きっこうでん)という工芸の上達を願う宮廷行事までさかのぼります。これが日本に伝わり、平安時代には貴族の宮廷行事として取り入れられました。

 一方で日本には古くより民間信仰で、棚機女(たなばたつめ)という巫女(みこ)が水辺で神の降臨を待つという禊(みそぎ)の行事がありました。

 民衆の行事としてはこの2つが結びついて、日本での七夕行事になっていったとされています。

 

 織り姫星とひこ星は、ともに1等星と明るく、街の中でもよく見つけられます。7月7日の宵空に東の空を見上げると、白くひときわ明るく輝いているのが織り姫星、やや低くに輝くのがひこ星です。

 みなさんも、七夕の星空を見上げ、星の物語に思いを寄せてみてください。

 次回からは惑星について4回シリーズでご紹介します。

 

(天文係 安藤 享平)

2003年6月24日 福島民友新聞 「ふくしま星空散歩」より